2回目のセミナーにご参加くださった方からの質問について、回答を考えてみました。
学習者が変わって、反応が変われば、また違う考えが浮かぶかもしれませんが、今のところはこんなふうに考えています。
セミナーにご参加くださってありがとうございます。
その際にいただいた質問について考えました。 学習者が、また、学習環境が変わればその答えも変わってきますし、教師自身の考えも変化していきますから、これが正答!と言うことはできません。が、このように質問について考えることで、ご自身の現在の指針を見いだすことはできるかもしれません。そんなものとしてお読みいただければと思います。 (🐯)=杉浦千里 |
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Q1 | 「授業をとってくれている」ということは高等教育機関での授業での反応についてのお話に限っているということでしょうか。
いえいえ、どんなタイプの学習者でも「日本語で書けるようになりたい」と願い、そのために時間を使い、学ぶ努力をしているなら、その時点で大いにプラス評価だと思います。それを伝えた上で教師としては改善すべきポイントを指摘して、書く力の上達を後押しできればよいのでは。とにかく、諦めずに、いやにならずに学習を続けてくれること、特に作文ではそれが大切だと思っています。(🐯) |
Q2 | 第1課について質問です。 人によっては、おしゃべりと作文の内容(私を表す漢字1字)を考えるのが難しい、(つながらない)という人もいると思いますが、 作文の内容はおしゃべりの内容と違っても大丈夫でしょうか。
できればつながってほしいですね。そうでないと、また、一人で書く内容に呻吟するか、または、まとまりのない文の羅列になる恐れがあります。これまでの私のクラスでは、第1課で「つながらない」という人がいなかったのですが、もし、そうなら、どうしてそう思うのか、その人と話してみたいですね。思考のどこかに滞りがあるのかもしれませんし、課題の指示が十分に理解できていないのかもしれません。(🐯) |
Q3 | 作文に字数制限を設けていますか。
「~行以上」「~字以上」と評価表にはありますが、制限は設けていません。書く量が多すぎて(ある意味、素晴らしいのですが)、添削に支障が出るほどでしたら、制限を設けるといいのではないでしょうか。一般的な小論文作成でも、「〇〇字程度にまとめよ」という課題がありますから、それに慣れるという意味でも。(🐯) |
Q4 | 作文の添削にどのくらいの時間をかけていますか。
内容や学習段階によっても異なりますが、第1課であれば、1人10~15分程度、第7課のグラフと意見延べでは、30分程度でしょうか。頭を悩ませる内容や表現だともう少しかかることもあります。(🐯) |
Q5 | アウトラインの提示と活用は、具体的にどれのことでしたか。
全課にわたって、です。どの課の作文もアウトラインに沿って書く練習をします。学習者の多くはそれによって徐々に上達していきます。が、中には自分でアウトラインを考えて書きたいとがんばる人もいます。それで成功していればよしとしますし、わかりにくいところがあれば、それを指摘して意見交換します。時には教師の指摘より、クラスメイトからのズバッと一言のほうがよく効くこともあります。(🐯) |
Q6 | 学習者同士のフィードバックについて質問です。 中上級のクラス(少人数で仲も良いクラス)で、フィードバックをしあうように促しても、お互いの文を読んで終わり、ということが多いです。どのようにすればいいでしょうか。
コメントすべき点を明確にするというのはどうでしょう。「ペアの人の作文で一番いいなと思った文に下線をひいて、その理由を話してください。」「中心文はピンクで、支持文は黄色でハイライトして、アウトラインに合っているかどうか確かめて」「賛成できるところと、賛成できないところを一つずつ選んで、それについて自分の意見を言ってください」等のその作文に合った具体的なポイントを決めると意見交換しやすくなると思います。 |
Q7 | フィードバックの際のほめたコメントについて、どうしても「おもしろかった」だけになりがちです。 他のコメントを引き出す工夫があったら、教えてください。 「おもしろかったのは、どこ? どの文?」と突っ込んで聞いてみるのはどうでしょうか。それを考え、説明することでも十分コメントになり、意見交換になると思います。「『おもしろい、気持ちいい、楽しい』と言って終わっていいのは初級まで。中級になったら、そこをもう少し詳しく説明して。そのとき言いたいことを日本語で何というか調べて使うと、どんどん言葉が増えますよ」と学習者にもよく言います。第1課のヒント(p.4)はそのようなねらいで載せました。(🐯) 最近では、線を引きながら作文を読んで、ここがポイントだなと思うところを読者として学習者に伝えています。緑は作文のキーワードやキーセンテンスなど論点のポイントになるところ、黄は疑問に思ったところなど、色分けします。ほめたコメントのみで線を引くなら、例えば、青はおもしろかったところ、赤はもっとくわしく知りたいところなど、色分けすることもできます。ことばを考えるのはなかなか大変ですね。すべてをことばにしなくても、評価の意思表示はできるのではないでしょうか。(🐭) |
Q8 | ペアやグループで話すとき、1つの質問で話が発展して他の質問について話ができないグループがあるときはどうされていますか?
そばに寄っていって様子を見ます。ペア・グループのメンバーが満足しているなら、それでよしとします。そこから作文につなげていくことができるでしょう。もし、中に居心地悪そうな人がいれば、または、あまりにも脱線してしまっていたら、介入して軌道修正します。(🐯) |
Q09 | 会話の際は、相手の言葉に対しレスポンス良く答えることがある程度求められると思いますが、作文は少し事情が異なると思います。もともと作業が遅い、または、口が重いタイプは作文には時間がかかると思います。作文作業の時間内完了に対しても何か指導はされていますか。時間をかければできるタイプの学習者に余計な負担をかけたくはないのですが。
そうですね。作文を書く時間は個人差が大きいので、それぞれを尊重したいので、概ね作文を書く作業は宿題(授業外の時間)にしています。ただし、コースの最初と最後に書く「力だめし作文」(p.1)に関しては20分という制限時間を設けてその場で書いてもらいます。(🐯) |
Q10 | 再提出してもらう場合の質問です。 成績評価は1回目の作文を採点して成績に入れるのでしょうか。
私はリライトは随意としているので、1回目の作文で評価していますが、リライトが必須とお考えであれば、その採点方法を学習者に伝えて実施するのも良案だと思います。(🐯) 採点方法の成績評価も授業目的によって変えていいと思っています。再提出をする場合も、再提出は任意で成績なしにする、あるいは再提出も成績に含めて1回目と2回目の作文の採点の比重を変えるなどできます。(🐭) |
Q11 | 「何時も寝る」は「何時間も寝る」とお直しになったのですね。私は「何時」を「いつ」と読んで「いつでも寝る」とばかり思っていました。
そうですね! その読みもあり、ですね。なるほど。 |